ケアンズで感じたこと
8/28~9/3まで、ケアンズへ行ってきました。行程は1週間ですが、前後は移動日で「実質5泊5日」の滞在でした。旅行中「ケアンズで感じたこと」を綴っておきます。
 ■ロードトレイン
ケアンズは3度目です。目的は「探鳥」で、3度目ともなるといささか「マニアックなコース」となってきます。
夜間飛行で早朝にケアンズ着。行程2日目が実質初日です、途中2回「寄り道」はしたものの、アウトバックと呼ばれる砂漠地帯を目指しました。ケアンズから450㎞内陸に入ったジョージタウンが最初の目的地です。
オーストラリア的砂漠と呼ばれる「アウトバック」については、別のページでご紹介しますが、ここで取り上げるのは『ロードトレイン』についてです。

何せ広大な国土に2300万人しか住んでおらず、人口密度は極めて低い。そのため、鉄道網はあっても物流の脇役にすらなっていない。

広大な国土の物流の担い手は「ロードトレイン」と呼ばれる、陸送トラックです。
写真のように、巨大なトラックで2~4輌の荷台をけん引し、まさに「陸の列車」です。
こうなると「前進しかできない」そうで、急なカーブも切れない。そのため、1車線しか舗装部分がない道路では、対向車は道を譲るしかないという。なお、事前に「走行計画書」を警察に提出する必要があるそうです。
ケアンズの人口は17万人。オーストラリア北部では第2の都市だそうですが、やはり地方都市です。
一歩、都市部を外れれば「広大な土地」が広がります。そこでは、あらゆることに「サバイバル能力」が求められるという。その第1が「車の性能」です。車選びの原点は、デザインでも燃費でもない。
 ・丈夫で長持ち
 ・故障しない
コレが全てだという。
オーストラリアでは、トラックはアメリカ製ですが、乗用車(殆どがトラック兼用)は日本製で、特にトヨタの独壇場だという。更に、ダントツの信頼を得ているのが、トヨタのランドクルーザーだとか。
 ・オール鉄製(樹脂製ボディーで土道の多いところでは振動に耐えられない)
 ・電子制御を使っていないこと(故障は自分で治すのが原則⇒電子的故障は直せない)
ガイド氏に案内をしていただいた4日間、1300㎞の走行で素直にこのことは納得できました。

 ■アウトバックとオージービーフ
今回のケアンズ旅行での移動距離は1300㎞。それでも広大なオーストラリアから見れば、ホンの僅かなエリアに過ぎない。
ケアンズの人口は17万人で、我が「和歌山市」の半分程度。市街地から一歩出ればサトウキビ畑で、ケアンズから半径500㎞以内に、ケアンズに匹敵する町はない。そんなケアンズに国際空港があるのも不思議な気がする。
~先祖代々オーストラリア人~は存在しない。先住民以外は移民の国である。地域ごとに「出身民族別で色分けした地図」があるそうですが、日本人が最多を占める地域はケアンズ以外にないそうです。


アサートン高原

アウトバック
ケアンズ市街地から海岸沿いを走り、九十九折の急坂を登りつめると「アサートン高原」に到着です。ここまでで約90㎞、標高は800m(最高標高は1000m)に達する。過去2回の旅行ではここまでは来ているのですが、今回はまだ賭場口です。
海岸線からアサートン高原までが熱帯雨林です。今も、熱帯雨林が点在するが、開拓時代は「開いただけ自分の土地」だったそうで、尾根も谷も開墾され「緑なす大地」となっている。

アサートンを約100㎞走ると「城壁」と呼ばれる山脈が見える。
城壁の切れ目抜けると、そこからが『アウトバック』です。風景は熱帯雨林から、突然オーストラリア的砂漠に変わります。
何故「オーストラリア的砂漠」と断るかといえば、砂の砂漠と違い、雨季がありその季節は下草が生えるからです。乾季は湿度が10%まで下がり、気温は真冬でも30度を超える(夜は一気に気温が下がる)。

アウトバックにあるのは、痩せた土とユーカリの木に蟻塚です。
乾季の下草は枯れ、それを放牧(放置)された牛が食べる。次の雨季までに食べつくせば餓死する。実際に牛の骨を各地で見た。
雨季の雨は窪地に溜まり、乾季は次々と干上がっていく。雨季まで持たなければ、これもまた「死の世界」です。痩せこけアバラの浮いた牛が水を求めて何十キロと歩いてくる。

砂の砂漠なら「オアシス」と呼ぶだろう水場は限られている。そこには、数も種類も膨大な野鳥がやって来る。牛もやって来るし、ワラルー(カンガルーの仲間)もやって来る。強烈なサバイバルの世界です。

アサートンの丸々太った牛も、アウトバックの痩せこけた牛も「オージービーフ」です。アサートンの牛は輸出用であり、外国人が食べる牛です。アウトバックの牛は国内消費用です。ジョージタウンのモーテルで「アウトバックのオージービーフ」を食べてみました。そのステーキは、とても歯ごたえがあり、とってもヘルシーです(脂分が殆ど無い)。濃密な野鳥を楽しみながらも、厳しい自然を見つめる旅でした。
追記1
アサートン高原からジョージタウンまで250㎞。途中で給油できる所は1ヶ所だけ。給油を忘れたら大変です。
追記2
片道450㎞の移動途中、5ヶ所で車にはねられたワラビーやワラルーの死骸を見た。夜行性の動物は車社会の犠牲者となっている。
追記3
熱帯雨林と砂漠を分け条件は、地質だと想像した。
オーストラリには地震はない。そのくせ火口湖が点在する。マグマが冷えて固まった台地がオーストラリアだと思う。地表のマグマが風化して「赤い痩せた土」を作っている。地表下に非透水性の火山岩があるところでは、地下に水が貯えられるため「熱帯雨林」になる。アウトバックでも突然熱帯雨林があったりする。その理由も非透水性の火山岩の有無である。
追記4
国の政策で熱帯雨林の復元が試みられている。一方、アウトバックで牛の放置(個体数の増加)で食物連鎖が崩れ、下草が死滅したところが目立つ。熱帯雨林の復元より、こちらの対策が急がれると思うが、旅人の大きなお世話であろうか。

 ■高賃金と物価
オーストラリアの最低賃金を聞いて驚いた。
 ・最低賃金は1700円/時間
業種別にも最低賃金があるようで、マクドナルドのパート賃金は2300円/時間(裁判で結審)だそうです。マクドの値段を知りたいと思いつつ、機会がなかったのが残念。
 ・給与所得者の平均年収は780万円(日本の倍近い)
 ・ブームに沸く鉱山では、巨大なダンプの運転手の平均年収が「1億円」で、ホットなニュースとなっていた

オーストラリアは「労働者天国」だという。賃金だけではなく「休暇期間」もべら棒(夏休みは3週間といったように)で、移民目的ではなく『出稼ぎ』と割り切ってやって来るアジア系外国人が多いとか。そこには、日本人の多くが移民目的であることと酷く違う世界があるようです。

一方で逃げ出した企業も多い。
 ・オーストラリにはかつて4社の自動車工場があったが、労組と折り合いがつかず全て撤退(ヨトタは来年)している。
 ・オーストラリア生え抜きの航空会社「jetstar」は、人事部をシンガポールに移し、オーストラリアの最低賃金から逃れている。
そんな分けで、オーストラリアの産業は「農業と鉱山」と言ったところです。先進国でありながら工業製品の生産は殆ど無い。ちなみに、海軍の新規潜水艦調達に関して、国産にすべきとの声が高いが、これに対し国防相は「我国ではカヌーも作れない」と答弁して罷免されている。
こんな高賃金を支えるには利益率を上げるしかない。そのため、物価も日本の倍近い。
但し、大量買いは安くつく。例えば、アイスキャンデーの値段(何故か国が定めていて、全国どこでも同じ代金)ですが、
 ・チョコバー1本300円(日本なら80円程度)
 ・2㍑のバニラアイスクリームのパックも300円
旅人が最小限に買うのは酷く高いが、1月単位の買い溜めなら「そうでもない」らしい。

私たちは、ケアンズは3度目。少しは学習効果がでて、今回はスチロールの箱と冷却用パックを持参した。これは移動が多かった今回の旅ではとても役に立ちました。


 ■トイレ文化
「ケアンズで感じたこと」、もこれが最後です。今回は、ケアンズだけのことでは無く「日本だけが違う」話です。
この数年で、オーストラリア(ケアンズ)3回、台湾2回、タイ(チェンマイ)1回の海外旅行をしています。何処へ行っても「水洗トイレ」で、ポッタン便所は体験していません。

だが、便器の構造となると「日本以外」は酷く簡単です。
建築設備の中で、排水設備だけは「自然に逆らわない(上から下へ流れる)」と言われたものですが、わが国では「電気がなければ流れない」時代になっています。でも日本以外では、自然に逆らわない簡単な便器です。便座も薄っぺらいモノ1枚で、暖房便座もウオッシュレットもない。ガルパゴス文化と言われようと、ウオッシュレットの快適さが世界に広まらないのが不思議です。大痔主の私は、旅行中不自由していただけに、関空のトイレで「日本へ帰った」と実感しました。
今回の旅行では長距離移動が多かったのですが、トイレには不自由しませんでした。
僅か10戸足らずの小さな町にも、公園とトイレが整備されていた(大きな木のマークとトイレマークで道路に表示されていたが、写真を撮り忘れた)。

小便器は、どこもステンレス製で「壁に向かって放尿」するようになっていた。使用後は、ハイタンクのひもを引き水を流す。私の小学校時代のトイレも「壁方式」でしたが。ルーツはこちらでしょうね。
とても「水が貴重」な地域なのに、水洗トイレは驚きでした。でも、浄化方式はどうなってるのだろう?