支笏湖再び「雪と映画」 
今回の旅行で、最大の主役は『雪』でした。冬の北海道は初めてではありませんが、こんな大雪にぶち当たったのは初めてです。大雪で「二日間の足止め」となりました。
空港へたどり着いた時で「私の財布は底をつき」、以降は「家内の財布」が頼りです。
タクシーをチャーターして観光地巡りをするような豪勢なことはできません。現実には、雪に閉じ込められて動きが取れませんでした。幸い確保したホテルが駅に隣接しており、大型で複合施設の駅ビルとの往来に不自由しません。
二日間で、観たかった映画2本を鑑賞できました。

 12月11日 雪
 
『君の名は』鑑賞
大ヒットのアニメ映画です。内容は大人向けで、じんわり泣かせてくれます。

〜同じ年の男女高校生が夢の中で入れ替わる〜
こんなキャッチコピーでしたが、内容はずっと濃い。
正確に言えば「時空ファンタジー」です。

入れ替わる高校生。実は、その時空には「3年間のズレ」がある。互いに探しあうが、時空のズレで容易に会えない。時空のズレに気付かず「探す」過程で、重大な事件が浮かび上がる。これはこの映画の『肝』と言える。

宮水神社の三葉(みつは)は、先祖代々「入れ替わり」を体験してきた。それは、やがてやって来る大参事から「村を救う」ために、救世主を探す旅でもあった。
映画終盤はめまぐるしい。時空の中で「大参事は何度も再現」され、その度に「歴史が変わっていく」。つまり、時空を往復しては「歴史を変えていく物語」です。

大参事を回避した二人の記憶は消される。きっと、それは「神の仕業」であろう。しかし、深層の記憶は「探しあう」
ある日、二人は出会う。そして「会ったことがあるみたい…」と。そこで『君の名は?』で終わる。
もう、私は大泣きしていました。


 12月12日 雪のち曇り
 『海賊と呼ばれた男』
百田尚樹氏の同名小説の映画化です。
同氏の「永遠の0」を映画化したメンバーで造られているが、今回は、百田氏の名前が消されている。

百田氏は癖(あるいは政治色)が強すぎて、ファンも多い代わりに、嫌う人も多い。
映画化で「氏の名前が消えた」理由はこんなことだろう。これに対し、百田氏は苦情を書きたてているが、きっと「出来レース」であろう。

この映画は、民族系石油会社「出光」を作った出光佐三氏の半生を描いたものです。
石炭時代の終わりをいち早く知り「これからは石油の時代」と、事業に乗り出す。ただ時代には早すぎで、何度もとん挫する。そんな折、資産家が資材をなげうって助ける。
世知辛い今では考えられないだろうが、昔は、若者の意気に「見返りを求めず」応援をする旦那衆がいた。
私の父は没落したが、その葬儀は盛大であった。旦那衆として多くの書生を援助した。こうして世に出た人たちが、葬儀に駆け付けた。だから、このシーンは私には良く理解できた。冒頭のこのシーンで、私はハンカチが放せなくなった。

国岡商店(出光興産のこと)は、戦前から「世界に飛躍」していた。
敗戦で事業を失い、復員してきた社員を抱える。この危機に、GHQの要請で「ラジオ修理」を手掛ける。これが、戦後の「石油解禁」まで、国岡商店が持ちこたえる理由となった。まさに「時の氏神」に支えられ、不屈の精神で立ち向かう。
  芯にあるのは「ニッホンの誇り」であった。

石油メジャーや政府役人の『利権派』に石油調達の道を閉ざされる。国岡商店最大の危機である。
起死回生の策で、唯一保有するタンカー「日承丸」を、イギリスによって武力封鎖されていたイラクへ向かわせる。それは「死地へ行け」と同じであった。それを、何事もないかのように「いいですよ」という船長。国岡のためなら「死ねる」そんな強者達である。
圧巻は、海上封鎖するイギリス海軍フリゲート艦に、一歩も引かず「直進する日承丸」であった。

「海賊と呼ばれた男」の原作を読んではいない。映画化でどのように変わったのか?知るすべはないが、これはこれで、戦後の心意気が伝わる映画であった。
追記
出光と昭和シェルの合併に、創業家が反対を唱え、合併話はとん挫した。
出光佐三氏が目指したものは、外資との合併ではない。それなら「海賊と呼ばれた男」は生まれていない。
ただ、出光佐三氏が「石炭お終わり」を見越したように、今は『石油の終わり』が近づいているのかもしれない。それが世界的に進む「石油業界の合併」である。さて?現代に出光佐三氏が現れたなら、いかなる舵を切るであろうか?